「サンクコスト(埋没費用)」の活用法

ひとりごと

「払った金がもったいない!」

心理戦で、うまく合意に導くには、さりげなく状況を利用するのが有効です。

ある弁護士が、女性のいる店に行った時のこと。
40分8,000円のお店です。気に入った女性を店外に誘おうと頑張りますが、なかなか効果がでない。40分経過するごとに、女性から言われます。

「まだ一緒にいてもいい?」
「もちろんだよ」

この会話で指名料が発生。女性が飲んだドリンク代もどんどん加算されていきます。2時間が経過しても、店外に連れ出そうもありません。そんなタイミングで女性が耳元でささやいてきました。

「このオプション頼んでもいい?」と。弁護士は悩みます。もう連れ出すのはムリではないか。それを見た女性はたたみかけます。「せっかく遊びに来たんだから・・・ねぇ」
そうだよな、せっかくここまで頑張ったんだから、オプション代くらいいいかと。
仕事では心理戦に長けた弁護士も夜のお店では手玉に取られているようです。この弁護士は「サンクコスト」により、冷静な判断ができませんでした。

ここでの「サンクコスト」とは、先に払ったムダなお金のことです。一定額を払ってしまうと、それまでに払ったお金を捨てるのがもったいなくなり、まともな判断ができなくなります。

「店外に連れ出すのはムリじゃないか」と感じつつも、それまでに払った金額が気になり、「ここまで払ったんだから最後まで頑張ろう」と考えてしまうのです。

詐欺でも悪用される考え方です。最初に10万円などを払わせて、「利益を上げるためには、あと20万円が必要です。今やめると、最初の10万円も戻ってこないですよ」と追加投資を促す詐欺は頻繁に起きています。

サンクコストは、お金だけに限らず、時間にも当てはまります。一定の時間をかけたことを途中でやめられないのです。

「時間」や「エネルギー」を使わせる


心理戦においては、この「サンクコストの法則」を使うことで、うまく合意に導くことができます。相手に、「せっかく00したんだから」と感じてもらえれば良いのです。

一般的には時間を使わせることが有利です。
交渉などに時間をかけることで、「これだけ時間をかけたのだから、話をまとめよう」という考えに持って行くのです。もちろん時間をムダにかけさせるのは良くありません。交渉中に「トイレに行ってくる」と牛歩戦術を使うというのは間違いです。

交渉では、簡単にまとまる事柄と、もめる事柄があると思います。時間を使う際、簡単にまとめる事柄を先にし、もめる事柄を最後に回します。もめる事柄の交渉に入った際に、「せっかくここまで時間をかけたのだから」と、もめる事柄も妥協してもらえる確率が上がります。サンクコストは、妥協を正当化させてあげるためのものです。
交渉を重ねることは、時間以外にエネルギーを使わせルことになります。

交渉の際に、接触頻度を増やしたり、共同作業で進めるのは、このサックコストの側面からも有効なのです。

「価値を感じているもの」を消耗してもらう


ただし、注意点が2点あります。

「サンクコスト」の考え方を活用する際には、「せっかく00したんだから」と相手が感じてくれるもの、相手が価値を感じているものを消耗してもらう必要があります。

ヒマな人を相手に、「せっかく10時間も交渉したんだから話をまとめましょう。」と言っても、「えー、別に10時間なんてたいしたことないよ」と思われてしまいます。忙しい社長相手なら、3時間でも、「せっかく時間をかけたのだから」と感じてもらえるでしょう。

相手にとって価値があるものを使ってもらわないと意味がありません。ヒマな人を相手に、自分の時間だけを投資してしまうと、自分のほうがサンクコストのワナにはまってしまいます。

また、それまでに使ったものと、新しく判断するものがかけ離れすぎていると、「せっかく00したんだから」という発送になりません。

たとえば、今までに投資したお金が2万円、新たに請求されるオプション代が10万円だったら、「せっかく」という発想ではなく、「2万円くらい仕方ないか、あきらめよう」という発想になってしまいます。少しずつ消耗してもらうのが正解なのです。

心理戦でサンクコストを利用する際には、この2点に注意してください。


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